以前、沖縄の土地に『琉球王国』という、一人の王様が治める国がありました。
しかし、1871年(明治4年)をキッカケに、後に”日本”と呼ばれる巨大な国のもとに琉球王国はなくなります。琉球処分というやつです。
琉球王国は、「廃藩置県(はいはんちけん)」という制度のもとに「琉球藩(りゅうきゅうはん)」となるのでした。
さて、アナタは、「廃藩置県」が実行されたあとの沖縄の泡盛業界は、どのように揺れ動いたのかしっていますか?
廃藩置県後の泡盛業界歴史一覧表
なかなか、廃藩置県後の泡盛業界の年表を目にすることがないので、表をつくってみました。
わかりやすく書いている表なので、きっちり琉球の歴史を学びたい方は各自で調べてみください。学校では、なかなか伝えてくれない琉球の歴史って面白いです。
泡盛業界歴史一覧表を読む前に用語のおさらい
- 『琉球王国(りゅうきゅうおうこく)』:沖縄が「日本」になる前にあった王国。
- 『廃藩置県(はいはんちけん)』:琉球王国が日本の一部になるキッカケをつくった明治政府の改革。
- 『琉球藩(りゅうきゅうはん)』:廃藩置県後、琉球王国はなくなり「琉球藩」と呼ばれる。
- 『沖縄県(おきなわけん)』:琉球藩が廃止され、”沖縄”は日本の1つの地域である「沖縄県」になった。
- 『琉球処分(りゅうきゅうしょぶん)』:琉球王国が明治政府により、日本国に組み込まれる過程。廃藩置県から沖縄県設置まで。
沖縄の簡単なおさらい
時代 | できごと | 沖縄の呼ばれ方 |
---|---|---|
明治4年以前 (1871年以前) | 琉球王国 | |
明治4年 (1871) | 廃藩置県 | 琉球藩 |
明治14年(1879) | 琉球藩廃止 | 沖縄県 |
泡盛業界歴史一覧表(1871~1945)
年 | 和暦 | できごと | 琉球史年表など |
---|---|---|---|
1853 | 嘉永6 | 黒船のペリー艦隊が沖縄に入港(翌年再び来琉) | |
1853 | 嘉永6 | 黒船のペリー艦隊が浦賀に来航 | |
1867 | 慶応3 | 大政奉還 | |
1871 | 明治4 | 廃藩置県 | ※鹿児島県の下に沖縄は入る。 |
1872 | 明治5 | 琉球藩設置 | ”沖縄”に「琉球藩」設置。 |
1876 | 明治9 | 泡盛、免許料さえ納めれば民間でも製造免許がおりる。 | |
1879 | 明治12 | 琉球藩廃止。沖縄県設置。(琉球王国消滅) | ”沖縄”は「沖縄県」となる。 |
1880 | 明治13 | 酒造税の増税を布告 (酒造業者の反対おこる) |
|
1884 | 明治17 | 鹿児島県酒造業者、 政府に沖縄焼酎の取締りを歎願 |
|
1888 | 明治21 | 沖縄県に初めて酒税法がしかれる。出港税のみで、県内は特例で免税同様の処置であった。 | |
1888 | 明治21 | 沖縄県酒類出港税則 施行 (酒類一石につき三円徴収) |
|
1894 | 明治27 | 日清戦争 勃発 | |
1895 | 明治28 | 日清戦争 終戦 日清講和条約) | |
1898 | 明治31 | 酒造家総代、出港税増徴の計画中止要請のため上京する | |
1899 | 明治32 | このころ、泡盛の密輸ひんぱんとのうわさ起る | |
1900 | 明治33 | このころ、与那原、勝連、平安山等東海岸より他府県への焼酎の密移出続出する | |
1901 | 明治34 | このころから、泡盛の輸出激減する (増税実施) |
|
1902 | 明治35 | 日英同盟締結 | |
1904 | 明治37 | 沖縄県酒類出港税則の一部改正法、公布・施行される | |
1904 | 明治37 | 日露戦争 勃発 | |
1905 | 明治38 | 新・増税実施される (砂糖消費税・沖縄県酒類出港税・通行税・売薬税・営業税・地租) |
|
1905 | 明治38 | この年、酒屋の増設めだつ | |
1905 | 明治38 | 首里区泡盛酒精販売組合設立される (翌年4月より製造に着手) |
|
1905 | 明治37 | 日露戦争 終戦(ポーツマス条約) | |
1907 | 明治40 | 酒造税法を沖縄および伊豆諸島に明治41年10月1日より施行する旨、公布される | |
1908 | 明治40 | 酒造税実施 | |
1908 | 明治41 | 酒造税法一部改正を公布する (施行は7月1日) |
|
1908 | 明治41 | 沖縄県酒類出港税一部改正を公布する(施行は10月1日) | |
1909 | 明治41 | 造酒税実施。実質的な課税の始まり。泡盛製造組合設立。内部のゴタゴタですぐに解散。 | |
1909 | 明治42 | 前年からこの年にかけて泡盛の輸出激減する | |
1910 | 明治43 | このころ、酒造業者の廃業者めだつ | |
1911 | 明治44 | 酒造組合設立される | |
1914 | 大正3 | 第一次世界大戦 勃発 | |
1918 | 大正7 | 第一次世界大戦 終戦 | |
1918 | 大正7 | 酒造税法改正により、泡盛の造石税、出港税ともにそれぞれ二円・四円引き上げられる | |
1918 | 大正7 | 第一次世界大戦 終戦 | |
1939 | 昭和14 | 第二次世界大戦 勃発 (日中戦争 勃発) | |
1941 | 昭和16 | 太平洋戦争 勃発 | |
1945 | 昭和20 | 第二次世界大戦 終戦(玉音放送) | 沖縄はアメリカの施政権下におかれる |
1952 | 昭和27 | 琉球政府発足 | 沖縄はアメリカの施政権下で「琉球政府」が設置される。 |
1972 | 昭和47 | 沖縄復帰 | 沖縄が日本に復帰する。 |
泡盛業界歴史一覧表の見どころ
この表をみると、泡盛オタクは興奮してきて、ツッコミたくなります。
でも、皆がみんな、泡盛オタクではないので個人的なツッコミのポイントを書きます。
推測(1) 泡盛つくりたい放題!泡盛戦国時代がはじまった
- 明治4 (1871) 廃藩置県
- 明治9 (1876) 泡盛、免許料さえ納めれば民間でも製造免許がおりる
- 明治38 (1905) この年、酒屋の増設めだつ
- 明治43 (1910) このころ、酒造業者の廃業者めだつ
※明治38年の「酒屋」とは「酒造業者」
これが、突っ込みたい部分!
※あくまで、推測という名の想像を書きます。学術的に使用した場合は、各自で裏取りしてください~。
「泡盛の免許なんて金さえ払えば手に入れられるんだよ」の明治9 (1876)
琉球王国が無くなると、泡盛の製造が「金さえ払えば泡盛造っていいよー」ってなりました。
んで、当時の沖縄人は「やったー!」って、泡盛をつくりはじめたわけです。
琉球王国時代、泡盛の免許取得は非常に難しかった
なぜなら、いままで、泡盛は琉球王国では『貿易品』であり、『宮廷酒』。英語にすると”ロイアルワイン(ROIAL wine)”。
泡盛は、とても大切なもので、それまで厳しく免許を管理されていたものだったのです。(詳しくは泡盛漫画『泡盛の歴史』 を読んでください。)
泡盛は特別な菌を手に入れれば造れる
さらに、泡盛製造に特別に必要なものは『黒麹菌(くろこうじん)』だけ。水や米やら、泡盛の材料は市場で手に入る。蒸留器も、家に有るものを工夫すればできる。実は、いくつかのポイントを押さえていれば泡盛をつくれるのです。
多くの酒造所が夢を抱え、散った明治43 (1910)
「泡盛を作れる」。さらに、「お金さえ払えば堂々と泡盛販売してOK」・・・ということで、泡盛製造業の戦国時代がはじまったのです。
そして、多すぎる酒造会社は廃業していくのでした。
推測(2) 泡盛酒造家総代「酒に税金をかけるなんて止めてください(涙)」と上京
- 明治17 (1884) 鹿児島県酒造業者、政府に沖縄焼酎の取締りを歎願
- 明治21 (1888) 沖縄県酒類出港税則 施行(酒類一石につき三円徴収)
- 同年 沖縄県に初めて酒税法がしかれる。出港税のみで、県内は特例で免税同様の処置であった
- 明治31 (1898) 酒造家総代、出港税増徴の計画中止要請のため上京する
- 明治32 (1899) このころ、泡盛の密輸ひんぱんとのうわさ起る
※沖縄焼酎って、「沖縄でつくられた蒸留酒」のこと。難しく考えず、ここでは「沖縄焼酎=泡盛」と思ってください。
これが、突っ込みたい部分!
沖縄が日本の一つとして組み込まれると、沖縄の酒造会社は大きな問題にぶち当たります。税の負担です。
※あくまで、推測という名の想像を書きます。学術的に使用した場合は、各自で裏取りしてください~。
「今日からアナタの酒には『沖縄県酒類出港税』という税金が課されます」の明治21 (1888)
大きなものだと、明治21 (1888)の「沖縄県酒類出港税」。
沖縄県酒類出港税とは、「沖縄の港から出荷されるお酒に税金をかけます!でも、特別に、沖縄の県内の酒にかかる税は払わないでいいよ!」というものです。
「沖縄県以外に売る酒に税金をかけるって、とても困るんですけど!(涙)でも、沖縄県内で消費するお酒の税の負担はそのままにしてくれるのか・・・まだ、マシかも。俺達は頑張るぜ!」・・・と沖縄の酒屋さんは思ったとか、思わなかったとか。
「おじさん、政府の中心で『No more 税金!』と叫ぶ」の明治31 (1898)
しかし、明治31年、酒造所のおじさん達の頑張りは限界に達します。
『沖縄の港から出荷されるお酒に課される税金を増やす』という話を耳にしたからです。
沖縄から船や鉄道にのって、必死な形相のおじさん達は、政府のお偉いさんに会いに行きました。
「日本のお偉いさんの皆さま~お酒の税金をこれ以上増やされると、俺たちの生活が苦しくなります(涙)」
風のうわさ「泡盛の密輸ひんぱん」の明治32 (1899)
「沖縄県酒類出港税の増税を止めてください」という酒造家総代の訴えは切実なものだったでしょう。
明治32 (1899) 、泡盛の密輸ひんぱんとの噂が流れました。
これは、憶測ですが、「酒の出港税なんか、払ってたら生活できないよ~」と密輸に手を出した酒屋があったのでしょう。
泡盛オタクの一言
以上のように、泡盛オタクが「泡盛の年表」をみて、推測という名の想像を書き連ねてきました。
沖縄人と共に、その歴史に翻弄される泡盛業界。難しい資料を読み解くと、数々のドラマが見えてきます。
今回は、泡盛業界の歴史をわかりやすく書きました。そのために、歴史の解釈の自由度は高め!もちろん、歴史をザックリとした表現や省略した部分があります。
その部分は、是非、国会図書館などで調べてください。沖縄の図書館にも資料が豊富です。
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